神奈川税務署員殉職事件

昭和22年07月04日 衆議院 本会議
[029]
大蔵大臣(無所属) 栗栖赳夫
なお、ここで一言報告をいたさしていただきたいと思うのであります。それは、神奈川税務署の端山という関税課長をいたしております者が、去る6月23日に、川崎市におきまして、酒類の集団密造の摘発に参加をいたしまして、十分に職責を果し、帰る途中、川崎駅に至る間におきまして、暴漢に襲われ、内出血をいたし、26日に死亡いたしたのであります。

まことに、税務機構の強化、税務官吏の充実、こういうことを申しますこの際におきまして、この関税課長の壮烈なる殉職は、私は税務官吏の亀鑑であると存ずる次第であります。

同氏に対しては、明日東京税務局その他の合同慰霊祭を施行いたしますし、またその冥福を祈るとともに、遺族に対しては、能う限りの慰藉の手段を講じたいと思うのであります。一言報告いたします。(拍手)





昭和22年07月05日 参議院 本会議
[014]
大蔵大臣(無所属) 栗栖赳夫
この際ちよっと御報告をいたさして戴きたいと思うのでございます。既に今朝の新聞で御存じのことと存じておりますけれども、神奈川税務署の間税課長端山豊藏君が、去る23日川崎における密造酒の検挙に参加いたしまして、任務を果しての帰途暴徒に襲われ、遂に殉職いたしたのであります。

只今私は東京財務局の局葬に参ったのでありますが、これは同君の死は徒らにすべきでなしに、広く全国の税務官吏の亀鑑として称揚し、且つ又同君の遺志をすべての税務官吏に伝えたいと思う次第であります。尚同君については、当局は能う限りの慰藉をいたしたいと思っておる次第でございます。併せて御報告いたします。





昭和22年08月27日 参議院 決算委員会
[035]
大蔵大臣(無所属) 栗栖赳夫
密造酒の取締につきましては、いろいろ骨を折っておる次第でございます。先般本会議でも御報告申上げましたように、川崎の事件のごときは最も顕著な例でございます。これはそれだけでなしに、ああいう大きな問題に至らぬものが沢山あるのでございす。

そこでこの川崎の問題につきましては、司法大臣その他にも言いまして、嫌疑者が漸く捕まったような次第で、これからこの真相がはっきりして来ると思うのであります。

全国各地におきましては、税務官吏が密造酒とかその他の税務行政上の業務を執行する場合につきましては、司法当局、検査当局、こういうものと一体をなして、そうして十分税務官吏を保護して、そうして税務行政に属するいろいろな検挙その他の行為をも十分なし得るように、実はあの直後に閣議でも決定いたしまして、各省にもその通知が出ておるのでありまして、これはお説のごとく、最も大事な点でございますので、この意味によって税務官吏の身をも保護して、十分安心して職務を尽させたい。かように考える次第でございます。





昭和22年12月04日 衆議院 財政及び金融委員会
[025]
日本自由党 宮幡靖
この法案のうち第1頁のしまいから3行目にあります「前項の場合においてその事務の執行に当り当該職員の生命又は身体に著しい危険を及ぼす虞がある」この事項でありまするが、これは具体的に申せばいかなる場合でございましょう。

[026]
政府委員(大蔵事務官) 今井一男
主といたしまして特殊な第三国人等に対する検査調査ないし滞納処分、こういった場合が該当するものと考えております。

[027]
日本自由党 宮幡靖
第三国人というお答えでしたが、それは間違いありませんか。そういたしますと、何か税務の調査、検査、滞納処分等にいく場合は、納税義務者から重大なる危険に襲われておるということを大蔵当局は予想してのことでございますな。

[028]
政府委員(大蔵事務官) 今井一男
従来からすでにその実例は幾多ございまして、相当の犠牲者もすでに発生いたしております。残念ながら現在におきましては、そういったことを頭に考えなければならぬ事態に相なっております。

[029]
日本自由党 宮幡靖
ただいま政府委員から御説明のございました実例を、この際差支えない程度に御開陳を願いたいと思いますが。

[030]
政府委員(大蔵事務官) 今井一男
先ほども大臣がお話になりましたが、本年7月でありましたか、神奈川の間税課長の端山君が川崎の桜本一帯の酒の密造の検挙にまいりまして、その帰路川崎税務署で打合せをいたしまして、その帰りに暴漢に襲われたのであります。病院にはいりまして2日いたして、ついに死亡いたしたのであります。

その際におきましても、その検挙に携りました署員で、途上で第三国人から拉致されようというような危険な場合もあったのであります。相当税務署でも威嚇を受けておるという事実があった次第であります。またそれ以外に各国人でも、密造の検挙につきまして、間々そういう事態が発生いたしておるのであります。



[032]
大蔵大臣(無所属) 栗栖赳夫
端山君の殉職の直後でございますが、最初の閣議できめまして、検察当局、警察当局の十分なる保護をきめまして、司法大臣からその通達も出してもらい、また財務局を通じて、税務署にもその通達を出したのであります。

なおそのときに、端山君の犯人のことにつきまして、再三司法大臣にも督促して、犯人及び死亡した経路なども明らかにした次第でございます。

今回追加予算を盛って税の徴収の完璧を期する上におきましては、さらにこの閣議の申合せを再確認をしてもらいまして、司法大臣から通達その他をも出してもらうようにいたした次第でございます。

なおしかし第三国人その他については、十分でない点がございますので、連合国の好意ある援助を要請をいたしまして、その点については、所在についてあらかじめ連絡をとってもろうならば、十分税務官吏の身の保護、職務執行を完全にできるようにしてやろう、こういうことにもなっておる次第でございまして、この点は特に十分注意をいたしまして、ぜひけがあるいは殉職があってはならぬと思いますので、十分政府としても注意をいたしまして、過ちのないようにいたしたいと思う次第であります。

[033]
日本自由党 宮幡靖
(略)これは保護する立場での法案でありますが、間税強制の実態におきましては、第三国人のような、さような違法なことをいたします特別な階級の人たちを別に考えますと、現在ではむしろ間税係員の方が、納税義務者に対して誤った攻勢をとっておる傾きの方が多いのであります。





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