昭和27年02月15日 参議院 地方行政委員会 [012] 政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇

昭和27年02月15日 参議院 地方行政委員会
[012]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
(略)

国内における共産主義運動関係者が武力革命の問題を、本格的な実践課題として取上げたように考えられますのは、おおむね一昨年、即ち昭和25年の秋以来のことであります。それは昨年12月14日、共産党中央機関紙「アカハタ」の同類紙と認定の上発行停止処分を受けました「内外評論」の第4号、これは1950年の10月12日附でありますが、「共産主義者と愛国者の新しい任務」の内容からも推定することができると考えるのであります。

その後この方向への準備工作は、非合法のうちに逐次進められつつあるものと考えられます。例えば重要工場、事業場、占領軍の基地、電気、通信、運輸の諸施設に対する調査活動、非合法的なゲリラ集会、各種のアジ・プロ活動、中核自衛隊の結成等の情報乃至は捜査資料としてこれらが現われておるのであります。

又この種の武装闘争に対する基本的な非合法資料といたしまして「内外評論」第15号、1951年の3月15日附でありますが、「内外評論」15号の「軍事方針について」及び「球根栽培法」第31号、1951年の11月15日附「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」など、これらも共産主義運動関係者に対する家宅捜索等から発見されておるのであります。

最近の傾向といたしまして注意しなければならないと考えまする点は、一つはいわゆる民族解放、民主統一戦線工作が労農、市民、青年、学生、文化運動等、政治、経済、社会運動の全面に亘りまして、いよいよ本格的且つ具体的に実践されようとしておる点でありまするが、それと共に他面には警察その他治安担当機関に対する牽制的な意味での実力行使がいよいよ積極且つ露骨に現われつつある点でございます。

前者につきましては「球根栽培法」第33号、これは1951年12月20日附になっておりまするが、それの「当面の戦術と組織問題について」及び同第34号、これは1月8日附、「全国組織会議の決定を実行するために」等の内容につきましてもよく窺い知ることができるのでありまするが、いわゆる抵抗自衛闘争の大衆組織を結成強化いたしまして各種運動のヘゲモニーを社会民主主義系の指導者から奪取しつつ、吉田内閣の打倒を通じて占領制度の撤廃、革命の実現を図らんとする戦術、工作が極めて詳細且つ具体的に組織の内部で討議されつつあるように見受けられるのであります。

対警察工作につきましては、「球根栽培法」の第32号、「警察工作立遅れを克服するために」という内容によりましても、従来の守勢の域を脱しまして、攻勢に転じつつあるもののように見受けられるのであります。葉書、ビラ、投石などを以ていたしまする恫喝乃至脅迫的な戦術は、本年1月以来続発いたしつつあるように見受けられるのであります。

昨年1年間における全国の警察官に対するこの種の脅迫的事犯は、これは昨年でありまするが、国警本部に報告のありました分、東京警視庁の分は不明でありますが、それを除きましても381件でございます。うち自治体警察に関するものが277件ということに相成っておるのであります。

これらの傾向は、取締機関たる警察の構成員を各個撃破しつつ内部動揺を招来せしめ、警察の独自の強味である第一線組織を、麻痺させ、そうしてこの種の取締に打撃を与えようとするものであろうと考えられる点は明瞭に看取できるのであります。併し先ほども申上げまする通り、これらによって取締官憲が或いは牽制をされたり、意気を沮喪したり、そういうような傾向は全然見受けられない点は心強い次第だと考えておるのであります。

以上漠といたしておりますが、最近の治安の情勢を併わせまして両事件の報告を終りたいと思います。御質問ございますれば……。
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