昭和27年04月25日 衆議院 行政監察特別委員会 [008] 委員長(自由党) 内藤隆、[009] 証人(警視総監) 田中榮一

昭和27年04月25日 衆議院 行政監察特別委員会
[008]
委員長(自由党) 内藤隆
田中警視総監は、昨年の12月以降、警視庁管内において、警察官及び警察機関襲撃事件が頻発しているが、各種事件を通じて、何か一貫したものが見出されなかったでしようか。

[009]
証人(警視総監) 田中榮一
ただいまの御質問に対してお答えを申し上げます。

なお答えるに先だちまして、昨年の12月以降警察官または警察官署等に対するいろいろな襲撃事件等が、やはり警視庁管内におきましても、相当多数事件として発生いたしております。試みにそれらのうちのおもなるものを申し上げたいと思います。

12月11日夕方、赤羽警察署管下におきましてデモ事件が起りまして、さらに同月26日午後10時30分ごろ、練馬署の印藤巡査が、その駐在所付近の畑の中におきまして惨殺されておった事件が起っております。これは私どもの捜査の過程から得た資料によりますと、思想的背景を持つ警察官襲撃事件と認定をいたしております。

さらに2月20日、これは全国において行われました反植民地デーの前夜祭といたしまして、東大構内におきましてポポロ劇が開催せられましたときの事件といたしまして、警察官が暴行を受けておる事件があります。

それから2月22日、駒場の東大教養学部構内におきまして、警邏警察官が多数の学生のためにつるし上げにあって、わび証文を書かされたという事件があります。

それから2月21日、これは全国反植民地闘争デーの日でございましたが、蒲田署管内におきまして、北糀谷(きたこうじや)の派出所が多数の暴漢に襲撃をされ、またある巡査が1名、多数の暴漢に襲撃を受けまして、身に数箇所の負傷を負い、さらに拳銃を奪取された事件があります。

それから2月28日、荒川署管内におきまして、一警察官が不法にも突然数名の暴漢に襲われまして、警察手帳を奪取された事件があります。

それから4月17日に池上警察署管内矢口派出所におきまして、午前7時ごろでありますが、工員らしい者が7名同派出所を襲いまして、某巡査をだまして屋内の休憩所に導入しまして、いきなり数名の者がこれに襲いかかって拳銃を奪取いたしました。同巡査も相当格闘いたしたのでありますが、重傷を負い、しかも重傷を負いながら逃走する者を追撃しまして、付近を歩いておりました交通巡査と協力のもとに1名を逮捕検挙いたした事件があります。

それから4月20日第2回東大事件が発生いたしまして、星野巡査が、これも正当なる警邏行為実施中に数10名の東大学生と認められる者に襲撃をされまして、危うく警察手帳並びに拳銃を奪取されんとしたのでありますが、幸いにしてこれは免れたのであります。しかしながら本人は若干負傷をしておるのであります。

それから4月23日教育大学におきまして、渡辺巡査が多数の者につるし上げを受けた事件がございます。これは何ら負傷はいたしておりません。

それから4月24日、京橋横町における朝鮮人学生による同種暴行事件が発生をいたしております。

そのほかにたとえば署長官舎等にいろいろないやがらせ的の行為をやっておりますが、その1、2の例としましては、2月21日志村署長公舎へ催涙弾を投入せられた事件がございます。

それから2月26日万世橋署長公舎へれんがを投入された事件があります。

また3月10日小岩警察署ヘカーバイト爆弾を投入された事件がございます。

以上大体当管内におきまして発生をいたしました事件でございますが、これらの事件を大体通観してみますと、非常に今回の事件は集団的に――必ず1人、2人でなくして、集団的に暴行をなし、しかもその暴行がはっきり権力闘争であり、権力に対していどみかかるという挑戦的な暴行行為であるのであります。たとえば警邏警察官が何ら事由なくいきなり暴行される、あるいは派出所に暴漢が乱入していきなり暴行を加えるというような、きわめて集団的の暴行事件であるということがその第一であります。

それからいま一つは、国家権力を代表するいわゆる警察あるいは税務署その他に対して、まっこうから権力反抗闘争を試みるという一つの特徴であります。

それからいま一つは、時間的に見て、警備の手薄の点であるとか、あるいはまた1人の巡査が漫然としておった、そこをいきなり虚をついてやるというような点がきわめてよく似ております。

それからいま一つは、いわゆる心理的に警察官にある一つの恐怖心を与えるとか、あるいは警察官の職務執行をにぶらせるとか、あるいは職務を回避させるという気持を起させるべく、あるいは署長公舎に物を投げ入れたり、いわゆるそうしたいやがらせ的の行動をするというのも一つの大きな著しい例でございます。

それからさらに最も重要なことは、いわゆる球根栽培法、これは最近球根栽培法がかわりまして、工業便覧とか何とかになっておると思うのでありますが、これらの中に記載されたもの、いわゆる敵から兵器を奪取する、あるいは反動警察官に対して公然と、敢然としてこれに対抗して行くというような、あの球根栽培法の戦術の線に沿うていろいろ行動をとっておるということであります。

しかも球根栽培法なり、栄養分析法――これは厚生省衛生試験所という名称で発行しておる秘密文書でありますが、厚生省衛生試験所というのは一つのカムフラージされた偽装の名前でありまして、これはいわゆる軍事行動の具体的な戦術に使うところの武器なり、そうしたものを書いた秘密文書でありますが、これらの秘密文書に書かれたいろいろの火焔手榴弾であるとか、あるいはカーバイト爆弾であるとか、燃焼レポ用紙のつくり方などということは、全部この栄養分析法に従って、企画の統一した同じような武器が至るところに使用されておるということは、何かこの中にある関連したものがあるのではないかということも一応考えられるのであります。

しかもこれらの暴行した者を逮捕すると、申し合せたように、ほとんど一言もしゃべらぬ。名前も言わなければ、住所も言わなければ、年齢も言わない。何を聞いても黙否権を行使するという強い申合せと申しますか、そうしたものでありまして、一旦起った暴行事件を検挙いたしまして、これを捜査いたしますにも、警察といたしましては相当な苦慮をいたしております。しかしながらかりに黙否権を行使いたしましても、傍証を固めて参りますから、かりに本人否認のままでも送検いたしまして、りっぱに犯罪を成立させる自信を持って警察側はやっておるわけであります。

大体今回のいろいろな事件は、風のごとく来りて風のごとく去る疾風的なやり方をもって、常に集まるときも三々五々集まり、そして集まったならば、かけ足でもってデモをやり、一方においてデモをやっておいて、片っ方において陽動作戦で何か事を起す。しかもそのデモは10分なり15分間でやってしまって、ただちに解散するというような、きわめて巧妙な方法でやっております。これに対して警察側も大体いろいろな方法を講じまして、十分事故防止に当っておるような次第であります。
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