昭和27年02月23日 衆議院 法務委員会 [003]~[014] 自由党(自由民主党) 押谷富三、参考人(警視総監) 田中榮一

昭和27年02月23日 衆議院 法務委員会
[003]
自由党(自由民主党) 押谷富三
私はここに御出席をいただきました警視総監に、これから申し上げる3点についてお尋ねをいたしたいと存ずるものであります。

その第1点は、去る21日都内の各所において行いました日共尖鋭分子によってなされた集団的かつ波状的な擾乱関係についてお尋ねをいたしたいと存ずるのであります。

その次に学園の自由、大学の自治と治安の責任関係について、東大内において行われた事件についてお尋ねをし、第3点は、先般富士銀行を襲いましたギャング事件についての捜査の関係をお伺いをいたしたいと存ずることの3点であります。

まず第1点について、去る21日に東京都内の各所において日共があばれました関係でありますが、この関係でお尋ねいたしますが、日本共産党の尖鋭分子で反植民地デーといったような催しを各所に行いまして、その際の参加団体がいろいろ各所において集団的な暴行を働いたのでありますが、その関係は背後に日共からの指令があってなされたものであるかどうか。この点をまず第一にお伺いをいたしたいと存じます。

[004]
参考人(警視総監) 田中榮一
ただいまの点につきまして私からお答え申し上げます。

去る21日全国的に行われました反植民地デーのデモの実際の様相をいろいろ検討いたしてみますると、日本共産党において秘密文書として発行しております「球根栽培法」というものがあるのであります。

この「球根栽培法」の第36号の内容を拝見してみますと、われわれは武装の準備と行動を開始しなければならないということが前提になっておりまして、全国の中核自衛隊がいわゆる軍事行動の一環といたしましてこの反植民地デーを利用いたしまして、随所に行動を起しまして相当不法な示威行進、集団示威運動等を開催したように考えられるのであります。

しかしながら私どもはその現象から見ておることでありまして、はたしてこれが確実に日本共産党が指示したものであるかどうかというような証拠等は今のところまだ見出し得ないのでありますが、現在のその結果から見た点から申しますると、まさに「球根栽培法」に指示しておるところの、われわれは行動を開始しなければならない、武装して行動を開始しなけばならないというようなその根本方針に準じて、しかもその遊撃作戦並びにその戦術等におきましても、これの原理をそのままに履行しておるようにも考えられるのであります。

[005]
自由党(自由民主党) 押谷富三
21日の騒乱の関係はことごとく対象を警察官あるいは交番、警察署に置いておるのでありますが、こういう警察を対象とした一つの騒乱は、その以前にかつて行われました北海道の白鳥事件あるいは長野における警察の集団暴行事件、あるいは練馬の巡査殺し事件等に一つの関連を持っておると思うのでありますが、こういう関係について警視総監はどうお考えになっておりますか。

[006]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。現在の階段におきまして北海道の白鳥警部殺害事件並びに印藤巡査の殺害事件等は、私どもは明らかにこれは思想的背景を持った犯罪であるということが考えられるのであります。

それから今回21日に集団不法行為が行われたのでありますが、この「球根栽培法」の中にもすでに労働者はいろいろな形で敵の武器を持ち出しており、大衆闘争の中でこれを意識的に計画すれば必ずとれることが明らかとなっておる、また札つきの反動警察官等を襲い武器を奪うこともできる、われわれはこれを行わなければならない、こういうことをはっきり言っておるのであります。

そうしてその使用する武器につきましては必ずしも近代的なものでなくともよろしい、大衆の持っている刀や工作道具、農具も武器となり得るし、また竹やりや簡単につくることもできる武器も使用することができる。特に敵を襲撃するために必要な――敵というのは、これはおそらく警察官を指しておるものと考えられるのでありますが、敵を襲撃するために必要な輸送、軍用自動車のパンク針、手榴弾、爆発物等のような簡単なものはただちに製作することが必要である。

かように「球根栽培法」にはいっておるのでありますが、今回の集団暴行事件はこれを地のままに行っておりまして、明らかに国家権力に対する一つの反抗であるというようにその行動の様相から見てはっきり言えるのであります。

何にも罪のない警察官が忠実に警邏をしておる。その1人の若い警察官が警邏さしておる者を、数100名の者が取囲んで打つ、なぐる、あまつさえ武器まで――拳銃まで取上げるということは、これは明らかに権力に対する一つの反抗であると「球根栽培法」にいっておるところの方針をそのままに行ったのではないかというように私は考えるのであります。

[007]
自由党(自由民主党) 押谷富三
この21日の集団暴行に参加をいたしました人たちの組織あるいはその組合の種類等がおわかりでありましたら承りたいと思うのであります。

[008]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。大体におきまして、今回集団暴行に関与いたしました人々の属する組合は、あるいは電業社、日本鉛並びに日本機器株式会社等の労組が中心になりまして、あるいはそのほかの外郭団体、また一部朝鮮人も参加しているやにも聞いておるのであります。

それからこれらの人々は、いずれも私は共産党の言っている軍事行動の一環としての中核自衛隊の組織の一員であるのではないかということも考えられるのであります。

[009]
自由党(自由民主党) 押谷富三
この「球根栽培法」に書かれてあります指令そのものを実行したごとく見受けられる今回のこの集団暴行につきまして、最も参考となるべきは、当時この暴徒において用いました武器だと考えますが、その武器はどういうようなものであったか承りたいと思うのであります。

[010]
参考人(警視総監) 田中榮一
先ほど申し述べましたごとく、今回の暴徒の使用いたしました武器というものは、必ずしも近代的なものではないのでありまして、いわゆる大衆のつくり得る、また大衆が利用し得るものを適宜利用しておるということであります。

この中に特に敵を襲撃するために必要な輸送車用のパンク針、手榴弾、爆破装置等のような簡単なものとなっておりますが、きわめて簡単なものを使用しておったのであります。

[011]
自由党(自由民主党) 押谷富三
警視総監、今お手元にお持ちのものがありましたら参考のために拝見したいと思います。

[012]
参考人(警視総監) 田中榮一
ただいま御要請がございましたのでここに2、3御参考までに持って参ったのでありますが、これがいわゆるパンク針というものでありまして、小さな板にくぎを打ちまして、そうしてこれを路上に置きますと、たとえば警察官を輸送して参りまする際、途中において輸送用の自動車がパンクする、あるいは場合によってはこれを踏んで足に刺してけがをするというようなものであります。21日の日にこれを多数ばらまきまして、中にはこれを警察官にぶつけておるのであります。これは多数警察の方に押収しております。

それからいま一つは「球根栽培法」に手榴弾というようなものを書いてありまするが、当時暴徒は原爆ということを言っておったそうでありますが、これはとうがらしでありまして、これを破けやすい袋に入れて、取締りの警察官にまっこうからぶつけまして、そうして目つぶしを食わせるということになるのであります。それからいま一つは卵のからでありますが、この中にとうがらしを入れまして、この入口をふさいで、そしてこれを警察官の顔面に向ってたたきつける、こういうものであります。

それから成増の付近におきまして一部暴徒が起りまして、無許可の集団示威運動をなさんといたした際に、これはただちに取締りの警察官が参りまして、警告を発し、これを解散させ、東上電車で池袋に引返させたのでありまするが、その際に小びんの中に液体が入っておりまして、これを上から投げますと、警察官にすぐ発見されるものでありますから、みんなの下から投げたというような一つの戦術をとりまして、これは催涙ガスでありまして、これをまきますと一種の白い煙が出まして、これによって少くとも10メートルくらい離れておる者が涙が出て、まともにものを見ることができないというような、いわゆる催涙弾ではございませんが、催涙液体のようなものを使用いたしておりまして、これはただいま警視庁の鑑識課において科学的な分析をいたしまして、近くその液体の名称等も明瞭に公表できる時期があるであろうと考えております。

[013]
自由党(自由民主党) 押谷富三
それだけですか。

[014]
参考人(警視総監) 田中榮一
なおここに当時のいろいろな惨状の写真もございますので、ごらん願いたいと思います。
前略と後略は省略、旧字は新字に変換、誤字・脱字は修正、適宜改行、
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