昭和27年03月27日 衆議院 本会議 [005] 改進党 小川半次

昭和27年03月27日 衆議院 本会議
[005]
改進党 小川半次
私は、最近頻発する派出所あるいは税務署襲撃事件について、法務総裁並びにこれに関係ある各大臣にお尋ねしたいのであります。

北海道では白鳥警部が射殺され、東京では印藤巡査が惨殺され、長野県においては数名の警官が集団暴行を加えられた上に短銃を強奪されたという恐るべき事犯が起って以来、各地において警察官に対する集団暴行や派出所の襲撃、あるいは鶴見、川崎、横須賀等を初め各地の税務署の破壊等が頻発して、国民の不安をつのらしておるのであります。

すでに伝えられておるごとく、この悪質な破壊的行動を煽動する最も根拠的なものは、日共の非合法機関紙と目されている球根栽培法32号の示すところにあると思うのであります。

たとえば、その内容の一部には、警官の一人々々を居住地において各個に撃破して行くことであるとか、あるいは家庭における警察官を包囲し、彼らをして番犬であることにいたたまれなきまでに追い込んで行く意識的、計画的大衆工作が重要であるというような意味で煽動しておるのであります。

われわれの想像するところによりますと、おそらく今日までに発生した事犯は、ほんの初歩的なモデル・ケースにすぎないのであって、今後はさらに大規模の集団的暴力行為が執拗に繰返されると思うのであります。これがため、警察官を萎縮せしめ、司法権を睡眠せしめ、国家の権力は無視され、やがて無政府状態にまで追い込まれて行くのではないかという恐るべき不安感が国民の間に流れていることを、政府は見のがしてはならぬのであります。

私は、このたび京都において行われた弾圧法粉砕総決起大会並びにデモ行進中の情景を見て、日共を背景とする集団暴行が今後さらに悪質化して来るのではないかという印象を強くしたのであります。

実は京都では、今から1箇月前の2月23日にもデモ隊の集団暴行事件が発生し、3箇所の交番所と2箇所の税務署が襲撃され、その際目つぶし用のパチンコ玉、灰のつぶてを用いて、多数の警察官が傷害を受けたのであります。

この恐怖と戦慄のいまださめない1箇月後の今日、再びさらに悪質な集団暴行がデモ隊によって行われたのであって、しかも今回の場合は、単に警察官のみに対する暴行ではなく、一般民家に対しても、この家は反動の家だと称して破壊し、さらに報道の任にあったところの京都新聞社の山形、井上両記者、大阪新聞の藤本記者らが集団暴行を加えられ、山形記者のごときは目下生命が案ぜられているという状態であってわれわれは今回の事犯を単なるデモ騒ぎの余波として片づけるわけには行かないのであります。(拍手)

この事件は、労働組合総評議会に日共が合流したものであって、暴力行為は主として日共党員によってなされたということが、大体明らかになっておるのであります。(拍手)

われわれが今回の事件を特に重視するのは、報道関係者に対する暴行であります。民主主義の基礎に言論、報道の自由が存在することは、あらためて言うまでもないところであって、報道の自由を奪うことは、国民の自由を奪うことであり、しかも多数が暴力をもって取材中の新聞記者に暴行傷害を加えたことは、自由と民主主義を破壊するものであって、もはや正気のさたとは言えないのであります。(拍手)

彼らの表面唱えるところは自由や解放などと申しておりますが、一歩裏にまわれば、暴力、ファッショにみずから道を開いているといわねばならぬのであります。わが国の集団的行動においては、諸外国に見られないような脅迫、侮辱、暴行、財産破壊等が発生するのであって、今回の事件を見ましても、交通機関を妨げ、交番所を襲い、民家や自動車に投石するという悪質な行為であって、これが労働運動の延長ででもあるかのごとく考えておる一部分子の行動は、昔の百姓のむしろ旗一揆にも劣る無統制、無秩序を暴露するものであってわれわれはそのすべてを軽蔑するものでありますが、特に報道機関の取材を野蛮な暴行によって妨害した事実に対しては、自由と文明の名において断固として容認し得ぬところであります。(拍手[その通り」)

以上、白鳥事件あるいは派出所襲撃事件、税務署破壊、報道関係者に対する暴行傷害事件は、すべて一連の関連があると思われるのであって、今後さらに大規模の集団暴力が予想されるとき、政府においていかなる対策があるか、また白鳥事件や、その後頻発した暴力事件の結末が一体どうなっておるのか、国民はその結果を知りたいと思っているのであって、この際明らかにしていただきたいのであります。

また今回の京都の例を見ましても、警察官が萎縮してしまって、報道記者が暴行されている現場を目撃しておりながら、それをとどめ得ずして傍観していたという事態も生じたのであって、こうしたことは、今後の治安上にも影響あることと思いますので、こういう問題についても政府の態度を明らかにしておかなけおばならないと思うのであります。

私は、この機会に文部大臣にお尋ねしたいのであります。最近、労働組合のデモ隊の中に、高等学校生徒の参加が非常に多くなって来たのであります。京都の例を見ましても、デモ隊の暴行者の中に、しばしば高等学校の生徒が含まれているのであります。

逮捕された、ある高校生の手記によりますると、某党の幹部から、君たちは未成年者であるから、事件を犯して逮捕されても寛大で、少年として特別な保護を受けるし、また未成年者であるから新聞にも本名が出ない、たいてい仮名になる、だから恥にはならないから大いにあばれてくれと煽動されたということであります。

思想的に未完成であり、すべて一本立ちのできない高校生が、労働組合の集団行動に加わって、はたしていいものであるかどうか。米国においては、未成年者がこうした種類の行動に参加することは禁じられているのでありますが、日本においてはいかなる解釈をとっておられるのか、この機会に明らかにしていただきたいのであります。

次に労働大臣にお尋ねします。聞くところによりますれば、本年のメーデーには各所に暴行事件が発生するのではないかとうわさされているのであります。われわれは、労働組合の健全な発展を祈るがために、秩序あるメーデーの行われることを望むものであります。

最近、一部尖鋭分子のため、ややもすれば暴力闘争を主とする傾向に労働組合がなりつつあることは、まったく遺憾なことであって、権利とともに義務を、自己とともに他人を、不規律よりも秩序を尊ぶところの労働組合が生れることによって、労働組合がその方向に進むことによって、日本の産業の発展は労働組合の発展とともになし遂げられると私は思うものであります。(拍手)

このときにおいて、もはや1箇月後に迫るところのメーデーに対して、うわさされるところのこれらの問題に対して、政府は今のうちから何らかの方法を講じておかなければならぬと思うのであります。すなわち、労働組合の幹部とともに労働大臣が懇談して、本年のメーデーを秩序あるメーデーに持って行かなければならぬと思うのでありまして、これらの点についても労働大臣の意見を承りたいのであります。

以上、私の緊急質問を終ります。(拍手)
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