昭和27年02月06日 衆議院 法務委員会 [021]~[033] 自由党(自由民主党) 田嶋好文、政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞、政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男、政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄

昭和27年02月06日 衆議院 法務委員会
[021]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
そこでもう一つ特審局長にお尋ねをいたしますが、先ほどは国警の柏村警備部長から12月、1月に起りました警官に対する集団暴行事件の報告を聞きましたが、特審関係に関係すると思われます集団的な事件、これはずっと古いのはけっこうでございますが、最近起りました集団的のそうした事件、これはどういうふうなものがございましょうか。それの詳細なる報告が得られますれば、まことにありがたいと思います。

[022]
政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞
最近起った集団的な暴行事件ということにつきましては、自由労組関係、あるいは鮮人関係につきまして、約1年間の概況を集計したものがございますが、ただいま持参いたしませんので、後日提出したいと思います。

実は特審関係についての集団暴行事件というお話がありました。これも狭く解釈いたしまして、特審の職員が集団暴行で負傷した事実があるかどうかというような意味に解釈いたしてお答えいたします。

実は昨年8月13日の夜、大阪市内におきまして、大阪平和友の会準備会主催の同会結成大会の流れが約300名の団体行進となって、7時30分ごろ同市内桜橋交叉点付近を通行、そこにたまたま特審の職員の田島事務官が佇立して状況を視察しておったのであります。ところがたちまちその中の男が出て参りまして、特審のスパイだ、吉田の犬だ、しばらくして、特審の田島だと、口々に叫んで、約20~30名の者がこれを取巻いて、同事務官の胸ぐらをつかんで、なぐる、シャツを破るというような状況でありまして、遂には相当な重傷を負わせるような状況がありました。かような事例もございました。

[023]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
私の特審関係と申し上げましたのは、狭義の意味であります。今お答え願った点が私の質問の趣旨でございます。これは大阪だけでございましょうか、その他にございましょうか、この点承っておきたいと思います。

[024]
政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞
集団暴行事件は事案の重大なものはございませんが、軽微なものは従来しばしばありました。「アカハタ」の発刊停止、「アカハタ」の同類紙、後継紙の発刊停止処分等に際しましては、軽微な集団暴行事件はしばしば起きております。これはいずれ資料をそろえまして御報告したいと思います。

[025]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
私は本日法務府の方がおいでになっておられますから、法務府関係も同様な意味でお尋ねをいたしたい。

昨年は松川事件に関連いたしまして、ああした脅迫状が盛んに出された。こういうようなものにおきまして、法務府関係で全国的にどのような事件が起っておりましょうか。もつと具体的に申しますと、思想裁判から起った判事に対する脅迫、恐喝、また検事に対する恐喝、脅迫、傷害というようなことであります。関係当局のお答えを願います。

[026]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
ただいま御質問の点でございますが、御承知の松川事件につきましては、第一審の裁判を担当いたしました長尾判事に対しまして、名古屋の自宅に相当数の脅迫状が参りました。なおこの判事に対しまして自宅の附近をいろいろな風体をした者が横行いたしまして、同判事の悪口を言うというふうな事件が頻発いたしましたけれども、この事件は幸い検察庁と警察の密接な協力によりまして、犯人の一部を逮捕しまして、目下起訴公判中でございます。詳細の資料はきょう持って参りませんので、具体的な事実内容は申し上げかねますが、その事件が1つございます。

なお最近の事件といたしまして、大分の西村検事の自宅に1月の22日の夜10時30分ごろでございますが、鶏卵大の石とともに、次のような脅迫文を木綿の布に包みまして、窓越しに投げ込んでガラスをこわして犯人が逃走した、かような事件が起りました。内容は「西村検事よ、米侵略者と売国奴の番犬として日本共産党を弾圧するのか。今後も弾圧するなら命はないものと覚悟せよ。われわれは武装を完了しておるのだ。札幌の警備課長は民族の反逆児として殺されたのだ」。かようなことが書いてありました。この事件は目下大分の市警と検察庁と協力捜査中でございますけれども、いまだ犯人検挙に至っておりません。

次は先ほど問題になりました例の白鳥課長とも関係があるものと思われるのでございますが、ちょうどその直前、この札幌地検の塩谷検事の自宅に、各種の脅迫状が参りました。ちょうど新年の年賀状に事寄せまして、たとえば「松川事件の長尾みたいにお前も出世したいのか、ついでに天まで出世してしまえ、ことしは……」ちょっとこのへん文面がわかりませんが「遺言を書いてから、水さかずきをかわしておけ」というふうな年賀郵便が舞い込んだ。これが似たような文章で幾つか入っておりました。

なお松川事件の第二審の判検事に対しましても同様な投書ないし脅迫状めいたものが舞い込んだというような報告も参っております。

それらの点につきまして、いずれ詳細なる資料がありましたら、何かの機会にまた御参考までに申し上げたいと存じます。きようはとりあえず手元の材料だけにとどめておきます。

[027]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
それで警察、特審関係、検察関係のある程度の事情を知ることができたのでありますが、元に返りまして警察の問題にもう一点触れさせていただきます。

警察官に対する暴行事件で新聞の報道を見ますと、この結果には必ず警察官所持の拳銃を奪いとる、要するに武器を奪いとる、こういう結果が現われ、報道されておるわけであります。これに対しまして国警としてはいかような観察を持ち、いかような処理をいたしておりましょうか、これを最後に承っておきます。

[028]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
警察官に対する暴行事件に伴いまして拳銃が奪取された事例は若干あるのであります。

これがいかなる意図によってなされておるかということは、ここで私が確言申し上げる段階ではないと思いまするが、先ほど申し上げましたように凶悪なる犯罪が頻発をいたしまするし、そうしたものに使用する意図をもって計画的に集められることがあるとするならば、これはゆゆしき大事であろうと思うのでありまして、警察官自身の修練、また警察のこれらに対する警備態勢というようなものにつきましては、今後とも十分に研究を重ねまして、正しい位置に強力に推進をいたして参りたいと思うのであります。

なお奪取されました拳銃については、今後におきましても鋭意捜査を続けて参りたいと考えております。
前略と後略は省略、旧字は新字に変換、誤字・脱字は修正、適宜改行、
漢数字は一部アラビア数字に変換、一部括弧と句点を入れ替えています。
基本的に抜粋して掲載していますので、全文は元サイトでご確認ください。