昭和23年04月27日 参議院 治安及び地方制度委員会 [015] 委員長(日本社会党) 吉川末次郎、[016] 文部大臣(日本社会党)森戸辰男

昭和23年04月27日 参議院 治安及び地方制度委員会
[015]
委員長(日本社会党) 吉川末次郎
尚この機会に森戸文部大臣が出席されておられますので、学校行政に関連いたしまして、この度の事件についての一応の経緯等を文部大臣から御説明を願いたいと思います。専ら我々委員会が文部大臣から聴かんとするところは、国内における朝鮮人学校の内容はどういうものであるか、又閉鎖したのはどういうことから起っておるのであるかというようなことを中心として御説明を願いたいと思います。

[016]
文部大臣(日本社会党)森戸辰男
朝鮮人の学校問題で、非常に大きな問題の起りましたことは、誠に遺憾に存じておるのでありますが、実は朝鮮人の子弟の教育が終戦後直ちに私共文部当局といたしましては、強い関心を持っておったのであります。

殊に昨年学校教育法が施行されましてからは、これを如何に取扱うべきかという問題が取り上げられまして、関係方面ともいろいろ連絡をとったのでありまするが、結局民主化の方向へ刷新された学校教育法が、日本国民はもとより、国内にありまする特殊な関係にある第三国の人々にも適用される。こういう結論に到達いたしまして、丁度大阪は朝鮮の子弟の児童の多いところでありましたので、大阪府から照会がありましたのに答えまして、文部当局の方からは次のような通達をいたしたのであります。

現在日本に在留する朝鮮人は、昭和21年11月20日附司令部発表により日本の法令に服しなければならない。従って朝鮮人の子弟であっても、学齢に該当する者は、日本人同様市町村立又は、私立の小学校、又は中学校に就学させなければならない。又私立の小学校又は中学校の設置は、学校教育法の定めるところによって、都道府県監督庁の認可を受けなければならない。学齢児童又は学齢生徒の教育については、各種学校の設置は認められない。私立の小学校及び中学校には、教育基本法第8条(政治教育)のみならず、設置、廃止、教科書、教科内容等については、学校教育法における総則並びに小学校及び中学校に関する規定が適用される。尚朝鮮語等の教育を課外に行うことは差支ない、これが第1。

第2は学齢児童及び学齢生徒以外の者の教育については、各種の学校の設置が認められ、学校教育法第83条及び84条の規定が適用される。

3、前2項の趣旨を実施するために適切な措置を講ぜられたい。

こういうことが照会に対して答えられたのであります。これは同時に大阪のみならず各都道府県に通達されたのであります。この通達が基であります。

昭和21年11月云々とありますのは、昭和21年11月20日の太平洋方面米国陸軍総司令部渉外局の発表で、連合軍最高司令部引揚計画の下において、故国に帰還することを拒む日本における朝鮮人は、正当に樹立された朝鮮政府が、朝鮮国民として彼らを認めるような時期が来るまでは、日本の国籍を保有する者とみなされることとし、又それに続いて昭和21年11月20日、太平洋方面米国陸軍総司令部渉外局発表によりますと、本国帰還を拒絶して日本に残留することを選んだ朝鮮人は、昭和21年12月15日以降日本に継続して居住すれば、それに該当するすべての地方の法律及び法令の適用を受けなくてはならんことを、十分承知の上でその選択を行っているのである。それに該当する地方の法律、法令の遵守を彼らに免れさせるような、在日朝鮮人の有利になる差別待遇は、一種の治外法権を創設することになるのであろう。これは如何なる見地から見ても正当化され得ないものである。こういうようになっているのであります。

昭和21年12月15日以降は日本の法令に服しなければならないのでありまして、教育については、先程申しました教育基本法、並びに学校教育法の法令に服さなければならないのであります。

従って在日朝鮮人の子弟でも学齢に該当する者は、義務教育として小学校中学校等に就学しなければならんのでありますし、又これら就学義務のある者の教育については、各種学校の設置は認められないのであります。朝鮮人でありましても、無論私立学校の設置につきましては、学校教育法に基いて先程も掲げてありまするように、監督庁の許可を受けて設置することができるのであります。その場合朝鮮語なり、朝鮮の歴史、文化を教えるということは十分認められるのであります。

従いまして、今年1月23日附で各都道府県知事に、以上の趣旨を達するために適切なる措置を請することになったのであります。
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