昭和27年05月07日 衆議院 地方行政委員会 [010] 法務政務次官(自由党) 龍野喜一郎

旧字版(新字版は下)
昭和27年05月07日 衆議院 地方行政委員会
[010]
法務政務次官(自由党) 龍野喜一郎
 本事件が発生いたしまして、ただちに東京地方検察庁におきましては現場に出頭いたしまして、その実情を見て参つたのでありますが、これはまさしく騒擾事件というふうに認定いたしまして、それ以来騒擾罪並びに公務執行妨害罪の罪名のもとに、検挙に努力いたしておるのでありますが、昨日まで送検を受けました総数は、二百七十八名に達しておるのであります。目下引続き東京地方検察庁及び東京警視庁におきまして、国警本部、特別審査局の協力のもとに、事件関係者の徹底的究明に当つておりますので、逮捕者の数は今後相当増加する見込みであります。検察庁におきましては、先ほど申しました通り目下全力をあげておりますが、右の事件の被疑者の確定逮捕、証拠の收集に当り、特にその背後関係並びに計画性の有無等、事件の全貌の究明に努めておるのでありますが、真相の判明次第どこまでも追及いたし、断固として処分する態度を維持いたしておるのであります。
 次に、本事件の性格を申し上げますならば、目下検察庁において捜査続行中でありますので、確定的なことは差控えますが、今回のメーデー・デモ参加者の大部分を占める総評傘下の穏健な労働組合員は、終始平穏裡に行事を行い、予定の解散地点において、それぞれ無事解散いたしましたことは、ただいまの警視総監の説明によつて御承知と思うのであります。本件は、一部極左的破壊分子が、群衆の昂奮を利用し、激越な扇動によつて行われた計画的組織的な暴挙であり、彼らのいわゆる軍事委員会の指導による計画的軍事活動として実践されたものと、当局では考えるのであります。実際騒擾に加わつたと思われる暴徒は、それぞれあらかじめ用意していた日本共産党地区委員会旗、同細胞旗、北鮮国旗のほか竹やり、こん棒、くぎ付プラカード等を振りかざし、これを武器として使用いたしたのでありますが、その数は約六千名を越えると見たのであります。しかも騒擾容疑罪で検挙いたしました者の年令層を見まするに、三十歳未満の青少年が、大体全体の三分の二を占め、また学生、朝鮮人、自由労務者、日本共産党細胞員などの占める割合が比較的多いということは、この暴挙に参加したものは特定の年令層のある種の組織体に属する階層であることを推知せしめるものであります。
 次に今次事件の背後関係について申し上げまするならば、今回の不詳事件の背後関係は、本年二月二十一日の反植民地デーにおける蒲田事件、同月二十三日の京都事件等と同様、その主体は一部極左的破壊分子であつて、彼らの企図する暴力革命の準備の実践の一環として行われたものと推測いたしておるのであります。今次メーデーに際しましては、これら極左的破壊分子のメーデーを利用する策動に関する情報が入手されたのみならず、メーデー会場、及び行進中における人民広場へ参集せよ、あるいはまた実力で人民広場を闘いとろうという内容のビラ多数が散布されて、大衆を扇動する行為などが活発に行われ、また日本共産党幹部岩田英一君は、主要な役割を演じている疑いがあるのであります。さらにまた今回の騒擾事件における破壊的暴力行為の主たる方法は、彼らのいわゆるゲリラ的軍事活動方針に従つて、計画的かつ組織的に行われたものであると推定されることなどから、今回の事犯が、その背後において、明らかに一部破壊的な共産主義者らの組織を基盤として、その指導並びに扇動のもとに行われたものと推測されるのであります。法務府の特別審査局及び国家地方警察本部並びに東京警視庁におきましては、今回の不詳事件に関連する情報を事前に若干入手いたしましたので、治安関係において相互に連絡して協議し、ことに東京警視庁当局としては、先ほど総監より申し述べたような方針によりまして、主催者側幹部に対しては数回にわたり厳重な申入れを行い、暴力的不法事犯の発生防止につぎ協力を求める等、十分なる方途を講じたのでありますが、残念ながら遂に予想以外の事態の発生を見るに至つたのであります。
 最後に、今回の下様事件によりまして、警察側にも相当数の負傷者が出たのでありますが、また暴徒側におきましても死者一名を含む相当数の負傷者が出たのであります。これらはあるいは警察官の発砲等によつて生じたことともうかがわれるのでありますが、これらに対する警察官の責任につきましては、当局といたしましては、これは自己または他人の生命身体に対する急迫、不正の侵害に対する防衛のためなされたもの、いわゆる正当防衛と認定いたし、警察官に対しての刑事責任はないものと考えておるのであります。従いましてまた国家補償法の適用は受けないものと、われわれは解釈いたしておるのであります。
 以上、簡單でありますけれども概要を申し上げた次第であります。



新字版
昭和27年05月07日 衆議院 地方行政委員会
[010]
法務政務次官(自由党) 龍野喜一郎
 本事件が発生いたしまして、ただちに東京地方検察庁におきましては現場に出頭いたしまして、その実情を見て参つたのでありますが、これはまさしく騒擾事件というふうに認定いたしまして、それ以来騒擾罪並びに公務執行妨害罪の罪名のもとに、検挙に努力いたしておるのでありますが、昨日まで送検を受けました総数は、二百七十八名に達しておるのであります。目下引続き東京地方検察庁及び東京警視庁におきまして、国警本部、特別審査局の協力のもとに、事件関係者の徹底的究明に当つておりますので、逮捕者の数は今後相当増加する見込みであります。検察庁におきましては、先ほど申しました通り目下全力をあげておりますが、右の事件の被疑者の確定逮捕、証拠の収集に当り、特にその背後関係並びに計画性の有無等、事件の全貌の究明に努めておるのでありますが、真相の判明次第どこまでも追及いたし、断固として処分する態度を維持いたしておるのであります。
 次に、本事件の性格を申し上げますならば、目下検察庁において捜査続行中でありますので、確定的なことは差控えますが、今回のメーデー・デモ参加者の大部分を占める総評傘下の穏健な労働組合員は、終始平穏裡に行事を行い、予定の解散地点において、それぞれ無事解散いたしましたことは、ただいまの警視総監の説明によつて御承知と思うのであります。本件は、一部極左的破壊分子が、群衆の昂奮を利用し、激越な扇動によつて行われた計画的組織的な暴挙であり、彼らのいわゆる軍事委員会の指導による計画的軍事活動として実践されたものと、当局では考えるのであります。実際騒擾に加わつたと思われる暴徒は、それぞれあらかじめ用意していた日本共産党地区委員会旗、同細胞旗、北鮮国旗のほか竹やり、こん棒、くぎ付プラカード等を振りかざし、これを武器として使用いたしたのでありますが、その数は約六千名を越えると見たのであります。しかも騒擾容疑罪で検挙いたしました者の年令層を見まするに、三十歳未満の青少年が、大体全体の三分の二を占め、また学生、朝鮮人、自由労務者、日本共産党細胞員などの占める割合が比較的多いということは、この暴挙に参加したものは特定の年令層のある種の組織体に属する階層であることを推知せしめるものであります。
 次に今次事件の背後関係について申し上げまするならば、今回の不詳事件の背後関係は、本年二月二十一日の反植民地デーにおける蒲田事件、同月二十三日の京都事件等と同様、その主体は一部極左的破壊分子であつて、彼らの企図する暴力革命の準備の実践の一環として行われたものと推測いたしておるのであります。今次メーデーに際しましては、これら極左的破壊分子のメーデーを利用する策動に関する情報が入手されたのみならず、メーデー会場、及び行進中における人民広場へ参集せよ、あるいはまた実力で人民広場を闘いとろうという内容のビラ多数が散布されて、大衆を扇動する行為などが活発に行われ、また日本共産党幹部岩田英一君は、主要な役割を演じている疑いがあるのであります。さらにまた今回の騒擾事件における破壊的暴力行為の主たる方法は、彼らのいわゆるゲリラ的軍事活動方針に従つて、計画的かつ組織的に行われたものであると推定されることなどから、今回の事犯が、その背後において、明らかに一部破壊的な共産主義者らの組織を基盤として、その指導並びに扇動のもとに行われたものと推測されるのであります。法務府の特別審査局及び国家地方警察本部並びに東京警視庁におきましては、今回の不詳事件に関連する情報を事前に若干入手いたしましたので、治安関係において相互に連絡して協議し、ことに東京警視庁当局としては、先ほど総監より申し述べたような方針によりまして、主催者側幹部に対しては数回にわたり厳重な申入れを行い、暴力的不法事犯の発生防止につぎ協力を求める等、十分なる方途を講じたのでありますが、残念ながら遂に予想以外の事態の発生を見るに至つたのであります。
 最後に、今回の下様事件によりまして、警察側にも相当数の負傷者が出たのでありますが、また暴徒側におきましても死者一名を含む相当数の負傷者が出たのであります。これらはあるいは警察官の発砲等によつて生じたことともうかがわれるのでありますが、これらに対する警察官の責任につきましては、当局といたしましては、これは自己または他人の生命身体に対する急迫、不正の侵害に対する防衛のためなされたもの、いわゆる正当防衛と認定いたし、警察官に対しての刑事責任はないものと考えておるのであります。従いましてまた国家補償法の適用は受けないものと、われわれは解釈いたしておるのであります。
 以上、簡単でありますけれども概要を申し上げた次第であります。
前略と後略は省略、旧字は新字に変換、誤字・脱字は修正、適宜改行、
漢数字は一部アラビア数字に変換、一部括弧と句点を入れ替えています。
基本的に抜粋して掲載していますので、全文は元サイトでご確認ください。