昭和26年02月01日 参議院 地方行政委員会 [007] 日本社会党(社会民主党) 吉川末次郎

昭和26年02月01日 参議院 地方行政委員会
[007]
日本社会党(社会民主党) 吉川末次郎
名古屋、大津及び京都のことについての具体的な事件の内容は、さっき申しましたごとく、ここに申上げることは長くなりますから省略いたしますが、大体以上申しましたようなことにおきまして、こういうことが窺われるのであります。

第1には、これら各地におけるところのこの騒擾事件というものが、非常に計画的に行われたということであります。即ち同時多発的に、ほぼ時を同じうして各地に事件を起しまして、そうしてその目的は警察力の分散を狙ったと見られるのでありまして、即ち今お話申上げませんでしたけれども、名古屋の愛知県庁に対するところの集団デモ事件と、神戸の只今報告いたしました長田区役所及び長田税務署襲撃事件等はいずれも11月の27日であります。

それから名古屋におきましては翌28日にも、これを繰返しているばかりでなくして、11(※12)月の1日に起りました大津地方検察庁に対するデモ事件は、彼らの当初の計画では11月28日に決行する予定であったと言われておるのであります。

更に27日当日、京都におきましては先に日本共産党京都府委員会が開催されまして、井上電機の犠牲者、レッド・パージを受けました犠牲者であります。それの奪還祝賀大会というものが計画されておりましたのですが、その集会の許可が与えられなかったので、共産党の公開党大会と称しまして、個々の参集者500名が気勢を挙げたのであります。

又12月1日大津事件の当日は、競輪が催される予定でありましたので、大津市の警察はそのほうに警備が割かれるだろうというようなことを予定した。併しながらそれは雨天のために中止されたのでありまするけれども、そういうことを非常に狙ってやっておるということが、当局からは報告いたしておるのであります。即ち以上申しましたようなことにおいて、非常に計画的である。そうしていわゆる同時多発的な戦略で以て、それを同時にやったということが窺われるのであります。

暴徒の行動に見られるところの計画性につきましても、名古屋の事件について見まするというと、三々五々各地から余り目立たないような方法でひっそりと集まって参りまして、そうしてそれが一定の所で集合して群集となり、或いはグループとグループとが一定の地点で計画的に合流いたしまして、そうしてそれが有力な集団となるように初めから計画しておる。

或いは他の地区から一味を動員いたしまして、大集団を形成する等の集合の方法や、例えば愛知県庁のガラス窓が破壊されたのでありますが、その場合に用いましたところの朝鮮人学童のパチンコ操作、子供がよく鳥を打ったりする遊びに使っておりまするところのパチンコに石ころをつけて、コムの弾力ではね返して鳥を打つあのパチンコであります。それを非常に使っておるのでありますが、それは名古屋におきましては、県庁の窓ガラスを割るのに子供にそれを使わせたのでありますが、同様にこれをほかの所でやはりそのパチンコを使っておる。或いは目潰しをするために、紙でこしらえたところの紙筒の中へ唐辛を詰めて来まして、そうしてその唐辛しの紙筒を振り廻して、警察官その他の目潰しをやるというようなことは、名古屋で検察庁の当局がそういう証拠品を挙げて来て、我々にいろいろと説明いたしたのでありますが、そのほかの地方でもやはり唐辛の紙筒を警察官の目潰しに使う。

或いは集団的にそういう行動をして押しかけて来るときには、警察官にピストルなどをば使用させないように、又相手方の戦闘力を削ぐという計画的な戦術によって、これは東京でも同様であったということでありますが、いたいけない小さな子供、それからか弱い女等をばその示威運動の先頭に立たせまして、そうしてその子供にわざと警察官に冗談を言って、ピストルをいじくらせたり何かして、そうしてそういうことをやらさして、まあ向うの言葉で言いますと、「おっさん、ええピストルやなあ」というようなことを言って、その子供に警察官の腰のピストルをいじくらせたり何かさしておいて、そうしてその隙に青年が石を投げたりいろいろなことをやっておるというような、そういう行動も視察いたしました地域においてそれぞれ極めて共通的なものがあるのであって、一定の統制のある行動をやり、又かねてそういう訓練を相当にやって、然る後にこれをやったということが窺われるのであります。

第2に、視察いたしまして共通的に感じますることは、さっき具体的に御報告いたしました事例によっておわかりになりますように、それが暴力的であり、又戦闘的であるということであります。これらの暴徒らは警察との衝突に備えまして、あらかじめ小石或いは瓦片、目潰し、梶棒等の攻撃道具を用意いたした者が多いのでありまして、又実際にこれらのものを使用いたしまして、果敢、執拗に警察官等に抵抗して、攻撃を警官に加えておるのであります。

名古屋の旧朝連の財産接収反対運動、そういう旧朝連の財産接収に反対するという闘争題目で名古屋ではそうした暴動が行われたのでありますが、その中心地でありまするところの中村会館というところでやったのであります。そこにおきましても神戸騒擾事件の根拠地でありまするさっき申しました朝鮮人の西神小学校におきましても、戦闘的な青年行動隊員が尖鋭活動の中心となっておるのであります。殊に神戸の場合は、先に御報告いたしましたように、彼ら青年は白鉢巻をいたしまして、みずから決死隊であると放言いたしておるのであります。

又暴徒の行動は警察力に対しまして極めて挑戦的でありまして、警備に当るところの警察官等が、これに誘発されて行き過ぎた行動に出ないように苦心したというように警察のほうの幹部は私たちに言っておるのであります。又警察官と衝突するに当っては、先ず警察官の帽子を奪うというようなことも戦術として共通的にやっておるのであります。

名古屋の事件におきまして、血と汗で築いた会館は血で守る、台東会館、これは東京の事件でありますが、台東会館のようにやるから犠牲を覚悟してかかれというような言葉を使いまして、その言辞は実力行使を暗示しておるということが窺われるのでありまして、その行動は極めてさっき申しましたように挑戦的であります。

それからいわゆる共産党的テクニカル・タームを以ていたしますると、地域権力闘争の展開と見られるのであります。それにつきましては日本共産党の機関誌の「前衛」第53号にそうした地域権力闘争のことについての記述があるのでありますが、長くなりますからこれは省略いたしますが、どうぞ報告書によって御覧を願いたいと思うのであります。

今回の事件及びその前後に起りましたデモ、集団陳情、集団暴行等の対象の多くは県庁、検察庁、警察署、それから税務署、市役所、区役所、県税務事務所、職業安定所等の官公署であります。又各地で各種各様の問題をとらえまして陳情、要求、抗議等を名として、デモ行為から集団暴行、騒擾事件になるようにいたしておるのでありまして、要求事項は、例えば12月1日に大津の地方検察庁に対するところデモ事件の際に、庁内に撤かれました朝鮮語によるとこのビラの内容の一端をここに翻訳したものによりまして御報告いたしますと、このようなことが書いてあるのであります。

吾等は次のことを要求する。
一、夫の賃金では食って行けない。
一、寒さを凌げる内職をよこせ。
一、貧困な同胞に正月を越せる物品を無料で出せ。
一、米代を上げるのは反対だ。
一、失業者に家賃、電灯、水道、米代を無償でせよ。
一、生活保護法を適用せよ。
一、朝鮮児童に教育補助金を出せ。
一、先生に越冬資金3カ月分を出せ。
一、昼食のかけを認めよ。
一、炭、毛布等の越冬物資を出せ。
一、にんにく、唐辛、胡麻、塩辛、白菜を出せ。
一、商工業者に無担保、無利子の資金を借せ。
一、貧困者より一切の税金を取るな。
一、職安労働者に食える賃金1日300円を出し、一切の失業者に職を与えよ。
一、朴光海、岡田を初め、あらゆる愛国者を即時釈放。
この朴光海、岡田というのは、これはこの指導者でありますが、それが大津におきまして検束されておるのであります。
一、朝日人民間の離間を策動する八幡の暴力団捏造事件を即時取消せ。
一、何の根拠のない救護資金の捏造事件を即時中止せよ。
一、あらゆる捜査に外国人登録証を悪用するな。
一、今回の事件に誣告、中傷をし、同胞を日警に売らんとする居留民団を叩きこわせ。
一、義勇軍募集絶対反対。
一、国連協力の美名をかり、朝鮮内戦に対し干渉反対。
一、戦争反対、ピストル政治は真っ平。
一、一切の外国軍隊は朝鮮より手を切れ。
一、自由平和独立を守ろう。

というようなことであります。そこで旧朝連系の朝鮮人と共産主義勢力とが連携合作して、そうして事件の主導力を握っておるということは明らかでありまして、各事件で検挙されました者の顔触れ、経歴などからそのことが十分窺われるのであります。

各事件に殆んど常に日本共産党名で激越な文句のアジビラが撒かれ、或いは貼られ、又共産党員のアジ演説等の応援が行われているのであります。共産党幹部級の有力分子というものは、殆んど第一線の行動には出ていない、わざと出ていないように見えるのであります。間接的な応援乃至指導に当っておるもののように思われると、当局は我々に報告いたしておるのであります。従ってこの地域におけるところの日本共産党の幹部級の者で検挙された者は極めて少いというのが、当局の我々に対する報告であります。

併しながらその他事件前における両者間の往来、動静というようなものは認められて、実質的には共産党の各地における支部が合作して、こうした事件をやったものであるということは明白であるというのが、当局の説明でありました。

大津事件におきましても、京都円山事件におきましても、先に若干御報告いたしましたが、一部の自由労務者が一翼として参加いたしておりますことは、注目すべきことであると思うのであります。自由労務者は、従来といえどもしばしば各地におきまして、職よこせの集団デモ事件を起していたのでありますが、今回の事件におきましては、朝鮮人、学生等の集団と合流して、集団暴行に加わっているのであります。最近レッド・パージによって解雇された尖鋭分子は、その旧職場に働きかけても受入れられなくなりましたので、方向を変えて自由労務者に対する働きかけに力を注いでいるとの情報と睨み合せまして、この騒擾事件における自由労務者の動向と役割を大体推察することができると、当局は我々に説明をいたしているのであります。

神戸の騒擾事件に関して男20名、女46名について警察当局が行いました、デモ行進をやったときの、そのデモ行列行進が通過いたしましたときの市民の記録なんかを集めているのでありますが、その警察当局が私たちに物語るところのことをば、参考資料としてここに申上げますというと、「デモ行動沿線罪体調査」というのでありまして、昭和25年11月29日午後5時現在での調査であります。これらの沿道の人間が、警察当局にそのときの事情について申しておりますところによりますというと、大体次のようなことが言われているのであります。

 1、戸を閉めて屋内でふるえていた。
 2、玄関の戸を閉め、奥の間に逃げ込みふるえていた。
 3、屋内で子供とふるえていた。
 4、屋内で手を耳に当てふるえていた。
 5、鮮人の殺気立った空気を見て焦躁と不安にかられた。
 6、恐ろしいので屋内に隠れていた。
 7、店の商品をなおして屋内に逃げた。
 8、家を捨てて逃げた。
 9、鮮人が家に侵入して来たので、奥の間でふるえていた。
10、鮮人が家に侵入して来たので、窓から飛び出て逃げた。
11、家の裏口へ鮮人が侵入して来たのでふるえていた。
12、鮮人が靴ばきのまま畳の上に上って来たのでふるえていた。
13、恐ろしくて屋内で仕事が手につかなかった。
14、志里池小学校教頭は生徒を避難させた。
15、八百屋の台を暴徒にひっくり返された。(被害1200円)
16、事務所の門を閉めた。
17、事務所の警戒についた。
18、警察官に対する暴行を見て不安焦躁にかられた。
19、鮮人が唐辛を持っているのを現認した。
20、事務所の責任者が人夫を避難させた。
21、区役所で机の下に隠れていた。
22、区役所の小使室に逃げた。
これは区役所の吏員だろうと思いますが、
23、座布団を頭の上に乗せて避難した。

こういうようなまあ調査を警察当局が我々に報告いたしているのでありますが、大体においてそのときの実情と、それを目撃していたところの周辺の人心の動きがこの一端で御了承を願えるかと思うのであります。

(略)
前略と後略は省略、旧字は新字に変換、誤字・脱字は修正、適宜改行、
漢数字は一部アラビア数字に変換、一部括弧と句点を入れ替えています。
基本的に抜粋して掲載していますので、全文は元サイトでご確認ください。